「念ずれば花ひらく」−。これは仏教詩人、坂村真民(しんみん)の名句です。
仕事において、私にもこの瞬間が3年前に訪れました。
私が敬愛してやまない料理人の斉藤一昭さん。
20年ほど前、彼は当時私が勤めていた銀座のホテルにやって来ました。
「厨房(ちゅうぼう)は厨房、ホールはホール」という、妙なセクショナリズムがはびこっていたレストランで、そんな狭義にとらわれず働く彼の目は、常に「お客さま」を見ていました。
喜ばれる料理を作るため休む間も惜しんで厨房に立つ彼の姿。
「こんな人と、もっと一緒に仕事ができたらどんなに幸せだろう」と思いながら月日は流れ、いつしか互いに全く別の道を歩んでいました。
それが20年の歳月を経て、運命の巡り合わせと多くの方々の尽力のおかげで彼とまた、この「十勝屋」で仕事をする機会をいただけた。
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