高校卒業後、札幌のホテルに入社した私を待っていたのは、皆がそうであるように、社会人としての厳しい洗礼でした。
最初に配属された中華レストランは、腕利きの職人集団。
地元のみならず、わざわざ東京からお越しになる常連客も多かった繁盛店で、接客や電話応対、お客さまの顔・名前・嗜好(しこう)など、覚えることも目白押しでした。
完売したメニューを注文され、「あいにく売り切れました」と答えると、「それで終わるの?代替品をお薦めするのがあなたの仕事でしょ」と、お客さまに指摘を受けました。敬語もしどろもどろの電話応対では、「君では話にならないから上役を出しなさい」と叱られました。後片付けも要領が悪く、そのたびに先輩に注意されました。
疲れ果てて寮に帰ると、酒に酔った先輩に「お前と一緒の部屋にいるやつが気に食わない」と、いきなり殴られたこともありました。
退職を決めた入社3カ月後の夜、寮に帰ると、母からの小包が届いていました。中には私の好物と励ましの手紙が・・・。部屋で一人、声を上げて泣きました。
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