今年もここ銀座に、十勝からトウキビが届きました!
眺めていると、遠い少年の日のことを思い出します。
夏休みのたびに私は弟と2人、小樽の蘭島という小さな町にある祖母の家に泊まっていました。
幼い頃からぜんそくで体が弱かった私のため、両親が「海風は身体に良いから」と行かせてくれました。
そこで私は弟と一日中遊び回っていました。
海で泳いだ後は、祖母が作ってくれたおにぎりと麦茶、そして採れたてのトウキビの塩ゆで。何よりのごちそうでした。
小学5年くらいだったと思いますが、それまで「危ないから」と、子供だけでボートに乗って海に出ることを許さなかった父から、「弟と2人で行ってこい」とOKが出ました。
男として認めてもらえたような気がして、うれしかったのを覚えています。
不安とワクワク感が入り混じった気持ちで櫓(ろ)をこぎました。
少し沖に行くと、巨大生物のように揺らめく海藻がボートにまとわりつくかのように漂っていました。
弟は「怖い」と泣きそうに。
私は「何ともない!」と強がって見せていましたが、本当は私も怖くて泣きそうでした。
1時間ほどの私の処女航海は無事に終わりました。
にぎわっていた海の家や焼き貝の香り、真っ黒に日焼けした監視員の名物おじさん−。
十勝から届いた「トウキビ」は、そんな夏の思い出も一緒に連れて来てくれました。
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